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酒井ブログ

2020/08/27

興奮

先日のNHKTV「クラシック音楽館」。いつもはN饗の定期公演を放送するのだけれど、ご多分に漏れず、このコロナ禍で新しいコンサートも無く、ここの処、過去のコンサートの映像を流すことが多くなった。

その中で、先日から3週に渡って放映されていたのが「日本の地方オーケストラ」の映像。

 

これは面白かった。

そこそこ聞いたことがあるオケもあれば全く知らないオケもあったりして、毎週なかなか興味深く観た。

 

中で、私が一番面白かった(良かった?)のが「京都市交響楽団」。

指揮は広上淳一。私とほぼ同い年なのだけれど、どうもこの指揮者を好きになれないで今に至っている。

と、言うのも、この人の指揮の様子を見ていると何だか殊更に上から目線で徒にオーケストラを制御し過ぎているように見える(聴こえる)。

 

実は放映されたのが私が大好きなマーラーの交響曲第一番「巨人」のフィナーレだったので、「あーあ・・・せっかくの巨人なのに・・・」という感じで観ていた。

冒頭からずっとテンポはやたらと遅め。「ほらいつもの・・・」と思いつつ、タダなので、まあ観ていたのだけれど、中盤から終盤に差し掛かって、そのストレスが頂点に達した頃、いきなりポーーーーン!と、言う感じで手綱を解き放った。

と、見るやオケがそこから実に瑞々しい輝きを放つ。

「ウワー!こんなにスゴイオケだったのか!」

その時初めて思った。

 

私の大好きな指揮者の佐渡裕がずっと前にTVのインタビューに応えて、

「オケの手綱をずっと絞って絞って絞って、オケも“行きたい!”聴衆も“行かせて!”って、その欲求が頂点に達するタイミングが必ずあるんです。そのタイミングを逃さずに絞っていた手綱を一気に解き放ってあげるとオケは面白いくらい異常なまでの力を発揮する」

と、言っていたことを思い出した。

 

クラシックのコンサートって面白いもので、聴衆はみんな黙――って静かに聴いているだけのように見えるけど、実は一人一人が知らず知らずのウチに結構なエネルギーを発している。

客席に居ても、ましてや舞台に居るとそういう無言のエネルギーと、いうか「興奮」をモノスゴク感じることがある。

また、オケはオケで、ノッテいる時はモノスゴク愉しいオーラを発する。

そういう舞台と客席のエネルギーを全て味方に付けて、ホール全体を興奮の坩堝に落とし込むのが最高に上手だったのが佐渡裕だった。

 

翻って、今回の京都市饗の広上淳一。

オケにも聴衆にも最大限のストレスを与えて、最後に一気に解き放つ。

図らずも私もいつの間にかTVの前で正座して「イケー!!」と、心の中で叫んでいた。もしかして上手く乗せられたのかなあ。

 

他には指揮者や曲目にも依るのだろうけれど、札幌交響楽団、広島交響楽団、山形交響楽団がとても良かった!

岩城宏之が創設した「オーケストラ・アンサンブル金沢」はずっと前に小澤征爾が振った時に、そのあまりに精密でデリケートなアンサンブルに衝撃を受けたのだけれど、今回の指揮は現音楽監督の井上道義。

正直な処、「ちょっと違うのかな」という印象だった。

いつになるのかは分からないけど、コロナ禍が収まって聞く機会があったら地方のオーケストラも支援の意味も含めて是非聴いてみたいと思った。