諫早建設の日常酒井ブログ
2021/01/13
NHKEテレ「陰翳礼賛」。
谷崎潤一郎の名著を映像で紐解いた。
私も随分前に読んで、とっても感銘を受けた一冊。
番組は安藤忠雄も登場して、建築の観点からもコメントをしていた。
要は西洋の空間のように「隅から隅まで煌々と明るく照らす」ことが能ではない、ということ。
陰があってこそ光がある、不便の中にこそ風情があると、いうこと。
もう50年も前、高校生時代の担任の先生が能の大家で(実際、後に「能楽」の専門家として大学の教授に招かれたらしい)、授業の一環で能楽堂にも行かされた。
当時は正に「行かされた」状態で、何が面白いのかも全く分からず、全くもったいないことに文字通り「豚に真珠」状態だった。
その時に先生が言っていたことで、何故か今でも覚えているのが
「俗に無表情なことを“能面のような”と、言うけれど、能面ほど表情が豊かなものはない。ただ現代の隅から隅まで明るく照らしてしまうような舞台、特に上からの照明では本当に“無表情”になってしまう。能は所謂“薪能”と、言うものがあるように“下からの光”更に薪や蝋燭のように光が揺らめくことに依って実に多彩な表情を表現することができるのだ」
ということ。
実際に能面を下からの蝋燭の光に翳(かざ)してその角度を少しだけ変えるだけでその表情が不思議なくらい豊かに変化をする。
それは「翳」があるからこそ。
実際の舞台では演者が物語に合わせて僅かに面の角度を少しずつ変えることに依って見事にその感情を表現して行く(らしい)。
実は現在施工中の東久留米市B様邸が正にそれ(らしい)。
このB様邸、初めてお目にかかった時に御夫妻揃って「お城フェチ」、更に奥様は「大正ロマン」大好き!ということが判明した。
建築中、日興電機の鈴木さんが私に
「ねえ、このお客さん、どんな人?」f
と、聞くので、上記の通り
「ご夫妻揃ってお城フェチで、特に奥様は大正ロマン大好き!だよ」
と、言うと
「だーーからかー!!」
と言う
「何で?」
と、聞くと
「いや、“普通の”家は当たり前(?)だけど、隅から隅まで明るく照らすようになってるんだけど、この家の照明計画はやけに暗い、というかワザと暗い処をつくっている、としか思えないんだよねえ」
と。
要は「大正ロマン」宜しく、正に「翳があるからこそ小さい光が明るい」を具現化しているらしい。
そういうお客様のご希望を見事に具現化した高嶋の設計も見事!だし、それに「あれ!?」と、気が付いて、お客様のキャラクターにまで思いを寄せる鈴木さんの洞察力もサスガ!と、いう他はない。
諫早建設の職人さん達はみんなこういう風にお客様に興味津々。
お客様の顔を見ながら、またお客様に想いを寄せながら家をつくっています。
ただ単に「箱」を造っているのとはワケが違うのですねえ。
私自身、とっても感銘を受けました。
まあどういう具合になるか、試しに電灯を消してみることだ。