諫早建設の日常酒井ブログ
2025/02/10
「佐渡裕」である
2015年にウィーントーンキュンストラー管弦楽団の音楽監督に就任、2023年からは新日本フィルハーモニーの音楽監督も務めている。
私が佐渡裕の演奏を初めて聴いたのは夏のミューザ川崎で都響を振ったコンサート。
その時のプログラムは私の大好きなマーラーの交響曲第一番「巨人」。
イベントの余興で、リハーサルからの公開だった。
こういうコンサートの場合、一番大事に且つ尊重されるのは指揮者のコンディションなのだけれど、多分、佐渡裕としてはプレイヤーを休ませたかったのだろう、早々にリハーサルを切り上げると、普通は本番まで自分も束の間の、しかしながらとても貴重な休憩を取りたいだろうに、一人だけ舞台に残ってトークショーを始めた。
客席とのQ&Aを始め、実にサービス精神豊かで、せっかく聴きにきてくれた聴衆をもてなそうという気持ちが十分に伝わった。
その後、TVの「題名のない音楽会」で司会を務めるようになってからも、あの時見たまんま、実にエネルギッシュでサービス精神満点の司会だった。
が、それより以前に感心したのはテーマの選び方。
多分佐渡裕主導で、視聴者が興味を持つような内容を実に丁寧に、また優しく掘り下げてぐれる。
要はそこここに「愛情」を感じる。
2015年からはウィーントーンキュンストラー管の音楽監督に就任したのだけれど、それに先駆けて、初めてベルリンフィルを振った演奏が実に実に実に素晴らしかった。
曲はショスタコーヴィッチの交響曲第5番「革命」。
後から考えたら本当に佐渡裕向きの曲だった。
特に第4楽章など、未だに私の中ではピカ一の演奏だった。
第2楽章からは背中がぞわぞわしてきて、気が付けば第3楽章が始まる頃にはTVの前に正座していた。
第4楽章は佐渡裕全開放!
こんなに迫力溢れる演奏はそれまで聴いたことがなかった。
一瞬、TVであることを忘れてしまうほどだった。
数年後、ウィーンに行く直前に「情熱大陸」で取りあげられた。
その時のインタビュアからの質問
「良い指揮者とは?」
に、即座に
「プレイヤーが全て自分の意思で自由に演奏している、と思い込んでいて、実はその全てをコントロールしている。そして、この指揮者の為にイイ音を出してやろう!と、全てのプレイヤーに思わせるような指揮者です。」
ベルリンフィルの演奏にはその全てが籠っていて、プレイヤーだけでなく、また会場に居た全ての聴衆だけでなく、TVのこちら側に居る我々までも佐渡裕ワールドに引き込んでしまうだけの実にエネルギッシュな演奏だった。
その後、ベルリンフィルから「二度目」のオファーが未だにないのは甚だ残念!ではあるけれど、世界にはそれだけレベルの高い指揮者がひしめいている、ということなのだろうなあ。